昭和医学会雑誌
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床反力計を用いた脳卒中片麻痺歩行の検討
―波形パターン分類と脳卒中機能回復の評価について―
川畑 博若山 吉弘三谷 智子山崎 勉入谷 誠
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1994 年 54 巻 1 号 p. 55-62

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抄録

脳卒中患者での片麻痺歩行を床反力計を用いて歩行解析した.36例の固定期片麻痺患者を対象にAMTI社製床反力計 (1面40cm×180cm, 左右2面, 左右踏み分け式) を埋め込んだ歩行路から得られた床反力波形の垂直方向波形 (Fz波形) と前後方向波形 (Fy波形) について, 過去の報告を参考に波形のパターン分類を行い, 患者のBrunnstrom stage・歩行速度との相関から波形の解釈を試みた.さらに脳卒中の発症年代別にみた時の機能回復についても検討した.次に8例の回復期片麻痺患者を対象に経時的に測定して得られたFz波形とFy波形から回復期に見られる波形について検討した.その結果, (1) Fz波形とFy波形とも過去の報告より数を減らして5つに分類できた. (2) 患側脚のFz波形では50歳以上において上り傾斜の緩やかな波形パターンを呈した症例が多いが, 発症年代別には差は認めなかった.機能的には歩行速度が遅い場合は上り・下り傾斜とも緩やかな波形を示した. (3) 患側脚のFy波形でも発症年代別には差は認めなかった.機能的には歩行速度が遅くなると患側脚波形の制動力が大きかった. (4) 発作後の片麻痺症状の回復期ではFy波形の方がFz波形よりも早期に正常化した症例がみられた.以上の結果から脳卒中患者の歩行動作を評価する際, 床反力計で記録された波形パターンは評価に客観的な指標を与えうると考えられた.

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