1994 年 54 巻 1 号 p. 77-79
症例は81歳, 男性.2日前よりの右下腹部痛を主訴に来院.急性虫垂炎の診断で緊急手術となった.虫垂には炎症所見なく, 盲腸の腸間膜対側を中心に, 周囲に硬結を全く触れない限局性の白色の盲腸壁を認め, 回盲部切除術を施行した.肉眼的には周囲に盛り上がりのない, 限局性に打ち抜かれたような約5×4cmの平坦な白色の病変で, 病理組織学的には周囲と境界明瞭な, ほぼ全層攀死に陥った盲腸の巨大憩室炎と診断された.発症から手術まで2日しかなかったこと, また病巣が腸間膜対側であることから, 何らかの虚血性変化も加わったと考えられる盲腸の巨大憩室炎の1例を報告した.