1994 年 54 巻 1 号 p. 72-76
症例は46歳男性, 十二指腸潰瘍にて治療中, 平成3年10月上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚Vater乳頭対側に粘膜下腫瘍を認めた.数度にわたり生検を行ったが組織学的診断は正常十二指腸粘膜であった.平成4年6月より時々黒色便が出現するようになり, 平成4年12月3日より黒色便持続し12月5日来院.緊急内視鏡検査にて粘膜下腫瘍頂部小潰瘍よりの出血を認め, HS-E局注施行により止血した.平成5年1月胃・十二指腸切除術が施行された.腫瘍は2.7×2.0×2.8cm大の管内発育型で, 表面に小潰瘍を伴い, 組織学的には桿状の核を持つ紡錘型細胞の錯綜より平滑筋腫と診断された.下血を反復する十二指腸平滑筋腫に関して若干の文献的考察を加えて報告した.