昭和医学会雑誌
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Rapid Expansionによる伸展皮膚, 特に表皮の超微形態学的, 形態計測学的研究
木下 賀雄
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1994 年 54 巻 1 号 p. 9-18

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抄録

皮膚欠損部の修復に有効な手段として近年rapid expansion法が考案され臨床に応用されている.本研究ではguineapigを用いてtissue expander挿入後10分, 15分, 30分, 60分, 90分, 120分の6群における背部伸展皮膚, 特に表皮の超微形態学的変化を経時的に, 光顕と電顕レベルで観察した.伸展持続時間30分群では有棘細胞間の細胞間隙が拡大し, 細胞質突起の伸展とdesmosomeに集積するtonofilamentsの配列の変化が見られた.60分群ではさらに基底細胞の扁平化とともに基底細胞間の細胞間隙の拡大も認められた.さらに60分以上の群では表皮の厚さも減少を示したが, 特に表皮の厚さの薄い部分の菲薄化が目立ち, 一方表皮の厚さの厚い部分ではあきらかな菲薄化は認められなかった.また真皮表層において膠原線維束が密に配列し線維間間隙の狭小化が認められた.90分群ではさらに真皮表層に存在する線維芽細胞の活性化を示す粗面小胞体腔の拡大と小胞の開口放出像の増加傾向が認められた.120分群では基底板に部分的な菲薄化が見られた.表皮細胞の接着装置 (desmosome, hemidesmosome) や膠原線維個々の超微細構造には10分~120分間の伸展皮膚全群において明らかな変化は見られなかった.Rapid expansionにより表皮は急激に伸展され, 60分以上伸展負荷をかけると機械的刺激により表皮に微細構造上変化が見られたが, その変化は表皮細胞のviabilityに影響を及ぼすほどのものではないと思われた.

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