昭和医学会雑誌
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Oddi筋層の病理組織学的検討
―加齢および胆道系結石症例の変化について―
佐藤 正邦副島 和彦神田 實喜男永山 剛久
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1995 年 55 巻 1 号 p. 33-44

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抄録
平滑筋のみでなく筋線維束間の膠原線維等を含めたOddi筋層について, 加齢および胆道系結石症例における変化を検討した.検討には剖検例150例より得られた十二指腸乳頭部を用いた.Oddi筋層には加齢により膠原線維・弾性線維の増生, 粘液腺組織の増生などが認められた.一方高齢者では, Oddi筋は一部で肥大・増生を起こし, 筋走行方向は管腔長軸に垂直に近づいて輪状に似た走行に変化していた.加齢によりOddi筋層のコンプライアンスは低下し, それに対してOddi筋は括約力を増強するための代償性変化を示したと考えられた.膠原線維・弾性線維の増生が高度になるとOddi筋層は硬化して胆汁鬱滞の原因となる.しかし胆汁鬱滞があるにも関わらず乳頭部をゾンデが容易に通過する症例 (乳頭不全型) が報告されており, この場合の内腔拡張には粘液腺の高度な増生の関与が考えられた.胆道系結石症例で認められた変化は一般症例の加齢による変化と同様であったが, 膠原線維と弾性線維の増生について統計学的に有意差を認めた.年齢的な結石有症率の変化との比較より, 筋線維東間の膠原線維の増生は40~50歳代の増加に, 弾性線維の増生は高齢での有症率増加に関係が深いと考えられた.これら加齢および胆道系結石症例に認められた変化は, 従来より言われているように慢性炎症と関連することが最も考えられた.
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