昭和医学会雑誌
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ブラジキニン受容体拮抗物質のラットセルレイン膵炎に対する予防効果の検討
―腹腔内および皮下投与の比較―
井上 徹也田中 滋城舩冨 等三田村 圭二岡本 謙一
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1995 年 55 巻 1 号 p. 51-60

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抄録
ブラジキニン受容体拮抗物質 (H-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH・nCH3COOH) の実験急性膵炎に対する予防効果を種々の投与量と, 投与経路について比較検討した.ラットセルレイン膵炎において血中ブラジキニンの増加が認められ, 急性膵炎実験モデルにおけるブラジキニンの関与が確認された.ブラジキニン受容体拮抗物質の前投与により, 膵湿重量の増量, 血中アミラーゼ, プロリルハイドロキシラーゼの上昇が抑制され, 組織学的に, 膵浮腫, 空胞形成の軽減がみられた.また, 膵湿重量あたりのDNA量の増加が認められた.さらに, 腹腔内投与より皮下投与で予防効果がすぐれていた.しかし, いずれの投与経路においても, 今回用いた投与量では明らかな用量依存性は認められなかった.ラットセルレイン膵炎の病態にブラジキニンが関与しており, ブラジキニン受容体拮抗物質投与により膵炎の増悪が抑制されることより, ブラジキニン受容体拮抗物質は急性膵炎の発症および増悪に対する予防効果が期待できる.また, 急性膵炎にともなう全身障害の一つの指標としての血中プロリルハイドロキシラーゼの上昇が, ブラジキニン受容体拮抗物質投与により抑制され, 本剤は膵に対すると同様に, 全身障害の発症および増悪にも予防効果が期待できるものと考えられた.
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