昭和医学会雑誌
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母性イメージよりみた母性発達段階の把握に関する実証的研究
今関 節子竹内 一夫横田 正夫神田 晃三浦 宜彦川口 毅
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キーワード: 母性, イメージ, 発達, 役割期待
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1996 年 56 巻 3 号 p. 307-316

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抄録

母性の発達段階を検討するために, 高校生, 大学生, 妊婦, 褥婦, 1歳半から3歳児をもつ母親 (以下幼児の母親) の各群を対象に母性のイメージについて27項目から構成された質問調査票を作成し調査を行った.数量化3類による解析の結果第一軸は「安定性」第二軸は「気楽性」第三軸は「独善性」の発達段階を測定しているものと考えられた.母親についてのイメージは, 「安定性」は母親の発達段階に応じて高校生・大学生では安定的に, 妊婦では最も安定的に, 出産後に褥婦は安定性が低下し, 幼児の母親は最も不安定な状況に推移した.「気楽性」は高校生・大学生では, 最も気楽で, 妊婦・褥婦で気楽性は失われ, 幼児の母親では両者の中間に位置した.「独善性」は高校生・大学生では母親は独善的とは考えておらず, 妊婦・褥婦はわずかに独善, 幼児の母親は強く母親は独善的と考えている方向に推移した.また, 第一軸から第三軸の総てにおいて幼児の母親は他の4群のいずれかとの問に有意の差が認められた.このことは幼児の母親の段階では「安定性」, 「気楽性」, 「独善性」において, 母親についてのイメージが特異的に変化していることを示している.さらに, 第二軸において高校生・大学生は「気楽性」を示すが, 妊婦・褥婦では有意に「気楽性」が失われ, 母性についてのイメージは大きく変化することが認められた.これらのことから, 母親についてのイメージを通じて捉えられた第一軸から第三軸に示された母親の性格特性は母性の発達度を表すことが明らかになった.以上, 成長過程における各個人のイメージしている母親に対する役割期待の尺度を測定し, 母親の発達段階を把握することにより, 今後母親に対する保健指導や対策の策定に必要な情報を得ることができることが期待される.

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