昭和医学会雑誌
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鼻唇溝三角部 (仮称) の計測の意義
野田 宏子
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キーワード: 鼻唇溝, 唇裂, 口唇面積
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1996 年 56 巻 4 号 p. 387-392

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抄録
唇裂患者の患側上口唇は健側に比べて小さいことが多い.また, 披裂の程度が重度になるにつれて組織量は少なくなるが, 口唇の初回手術後は, 健側とほぼ同じ位の大きさになることも多く, また, 術後, 時を経るに従い組織量が増えることも観察されている.近年, 唇裂形成術の術後評価については, 主観的に見た目の美しさ, 左右対称性, 解剖学的ズレなどが対象となり, 客観的には口唇各点の長さ, 角度などが測定されてきているが, 上口唇の大部分を占める鼻唇溝三角部, すなわち, 鼻翼基部, 鼻唇溝, 口ひげ境界線で囲まれた三角形の部位を評価の対象にしたものはほとんどない.
著者は昭和大学医学部形成外科で164名の唇裂患者の鼻唇溝三角部 (仮称) を計測し, 分析した結果, 患側鼻唇溝三角部は健側に比し小さいこと, また, 鼻翼基部の大きさと関連すること, 鼻唇溝三角部の大きさは手術により改善できることが判った.すなわち, 鼻唇溝三角部を測定することは口唇裂手術後の成績を比較する上での一助になり得ることが示唆された.
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