昭和医学会雑誌
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三次救急施設に於ける喘息死の検討
刑部 義美高橋 愛樹鈴木 一
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1998 年 58 巻 3 号 p. 270-276

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抄録

近年, 先進諸国における気管支喘息の死亡率は増加傾向にある.特に本邦の喘息死の年間死亡数は約6, 000人前後と同じ先進国である欧米などに比べて極めて高い.このため, 我国では喘息死の原因や対策に関する報告が数多く発表されているが, しかし重篤な発作を対象とした三次救急施設からの喘息死に関する報告は少ない.今回, 三次救急施設である本院救命センターに気管支喘息で搬送された症例のうち, 気管内挿管を必要とした重症喘息を対象に三次救急的見地から喘息死の原因および対策についての検討を行った.対象は1985年4月~97年3月までの12年間に当センターに入院した喘息患者92例中, 気管内挿管を行った61症例 (男34例, 女27例で平均年齢は41.7歳) である.これらの患者をSwinefordの分類に準じて病型分類を行ったところ, アトピー型 (A型) が34例 (55.7%) , 平均年齢は30.5歳, 非アトピー型 (NA型) は27例 (44.3%) , 平均年齢は56.2歳であった.転帰は生存例が30例 (50.8%) , 死亡例は31例 (49.2%) であった.また死亡例にはcardio pulmonary arest on arival (CPAOA, 来院時心肺停止) が25例 (80.6%) 含まれていた.死亡例の病型別分類では半数以上がA型の若年齢者であった.入院時の重症度評価をRespiratory Index (RI) により検討したところ, 死亡例で著しく悪かったため, 早期搬送の重要性を考慮して搬送時間 (救急車利用のみ) を検討したところ, 生存, 死亡の両例に有意な差はなかった.これより, 喘息死の原因をセンター搬送以前の問題と考え, 診療施設および診療態度の検討を行った.結果は死亡例の78%が開業医受診例で, さらに, 発作時だけあるいは不定期な受診例が75%もあった.今回の検討から我々は医師のアレルギー疾患に対する知識, 認識不足が喘息教育や的確な治療を患者や家族へおこなわれていなかったことをretrospective studyから示唆した.三次救急的見地から喘息死を減少させる対策として, 医師の喘息教育の向上とそれによって患者を定期受診させることが必要であると思われた.

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