昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
Print ISSN : 0037-4342
ISSN-L : 0037-4342
母体性および胎児性Dehydroepiandrosterone sulfateの母体血中ステロイド値に及ぼす影響
亀田 省吾清水 幸子橋野 正史小崎 俊男矢内原 巧中山 徹也森 弘
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 59 巻 3 号 p. 252-259

詳細
抄録

妊娠中母体血中に増量するestrogenの生成に母児双方がどの様に関与しているかを知るため, 後期正常妊婦 (30例) および無脳児妊娠例 (6例) の母体血中ステロイド値を安定同位体を用いたGas chromatography-mass spectrometry (GC-MS) 法により測定した.測定ステロイドはdehydroepiandrosterone (DHA) , 16α hydroxy-DHA (16α-OH-DHA) , estrone (E1) , estradiol (E2) , estriol (E3) およびandrostenedione (△4A) で, それぞれ遊離型と抱合型に分け, DHAと16α-OH-DHAは主たる抱合型である硫酸抱合型 (sulfate: S) を測定した.さらに妊娠30週の無脳児妊娠1例を対象とし母体および経腟的に胎児頭皮下にDHA-S100mgを投与し, それぞれ投与前後の母体血中ステロイド値を比較検討し, 以下の成績を得た.
(1) 無脳児妊娠例の母体血中遊離型および抱合型estrogen, 16α-OH-DHAならびにDHAは正常妊娠に比し有意に低値であった.DHA-Sおよび△4Aは有意差を認めなかった.
(2) 無脳児妊娠例の胎児にDHA-S100mgを投与すると母体血中DHA-Sは投与前値の約1.6倍に増加したことから, 胎児側DHA-SはS型のままで母体側に移行することが示唆された.
(3) DHA-Sの母体投与により16α-OH-DHA-Sは増加し, 16α-OH-DHAは変化しないことから, DHA-Sは母体側においてS型のまま16α-hydroxylationを受け, 16α-OH-DHA-Sに転換されることが示された.
(4) 胎児に投与されたDHA-Sは母体投与に比し, E3および16α-OH-DHAに効率よく転換されることが示唆された.
以上妊娠中のステロイド生成に対して母児双方のDHA-S代謝動態が異なることが示された.

著者関連情報
© 昭和医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top