昭和医学会雑誌
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非外傷性大腸穿孔15例の検討
―特に術前白血球数減少を来した8例について―
山口 真彦吉澤 康男木川 岳町田 宏根本 洋中野 浩上道 治真田 裕熊田 馨佐々木 純葛目 正央成原 健太郎
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2000 年 60 巻 6 号 p. 692-698

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抄録
大腸穿孔は上部消化管穿孔に比べ, 診断, 治療が遅れ, 重篤な合併症を惹起しやすい.特に白血球減少を来した症例は予後不良である.非外傷性大腸穿孔15症例を術前白血球数が4000/μl未満と4000/μl以上の2群に分け, 両群を比較し, 特に重症な4000/μl未満の白血球減少症例8例について検討した。穿孔原因として4000/μl未満の群では大腸癌, 特発性が多く, 4000/μl以上では憩室炎が多かった.4000/μl未満の群は4000/μl以上に比べ, 手術前後を通して血圧, 白血球数が有意に低く敗血症性ショックを呈する例が多く, 術後は有意にDICとなる例が多かった.また, 治療においても有意に濃厚な治療を必要とした.4000/μl未満の8例は平均70歳の高齢者にみられ, 穿孔の多くはS状結腸だったが, 胃癌浸潤例では横行結腸に穿孔がみられた.症例によりショック, DICを認め, 全例に人工肛門を造設した.術後は集中治療を行い, 長期入院を要し, 79歳, 女性で肝硬変を合併した特発性大腸穿孔の1例は術後2日目に死亡した.大腸穿孔は消化管穿孔と診断することが難しく的確な処置が遅れ, 停滞した大腸内容が流出するため重症化し易い.そのため腹部CTなどで微細な腹腔内遊離ガス像を見逃さず, 速やかに開腹手術を行い, 循環動態, 呼吸の安定, 敗血症, DICの治療など早目の対処が肝要である.
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