昭和医学会雑誌
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剖検例におけるAdvanced Glycation Endproducts (AGEs) の発現の検討
―特に糖尿病症例との比較―
秋田 英貴矢持 淑子矢持 忠徳丸岡 直隆山本 弓月大柳 文義太田 秀一九島 巳樹
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キーワード: 糖尿病, 糖尿病合併症
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2002 年 62 巻 4 号 p. 237-247

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抄録

近年, 糖尿病および糖尿病合併症とAdvanced Glycation Endproducts (AGEs) との関連性が示唆されている.しかし, その根拠となるAGEsの代謝経路および全身主要臓器における発現については, まだ十分には明らかにされていない.現時点でまとまった全身主要臓器におけるAGEsの局在の報告は非糖尿病患者におけるCarboxy-methy1-1ysine (CML) 局在の1報があるのみである.今回我々はCMLとPyrralineの2種類のAGEsについて抗CML抗体である6D12と抗Pyrraline抗体であるH12を用いSimplestain法で免疫染色を行って検討した.当院で経験した糖尿病の既往のある剖検症例50例 (全例糖尿病の既往が2年以上, 42~93歳, 平均72.1歳, 男性35例, 女性15例) (糖尿病症例群) と糖尿病既往のない剖検症例10例 (0~77歳, 平均50.2歳, 男性4例, 女性6例) (非糖尿病症例群) を対象として主要臓器におけるAGEsの発現・局在を検討し, その結果を陽性率で評価した.糖尿病症例群・非糖尿病症例群のいずれの群でも, CML・Pyrralineともに心筋細胞・気管支上皮細胞および動脈硬化巣では陽性率が高かった.しかし, 膵組織および腎組織では非糖尿病症例群でCML・Pyrralineとも陽性率が低く, 糖尿病症例群ではCML・Pyrralineともに陽性率が高かった.膵組織・腎組織はCML・Pyrralineともに非糖尿病症例群と糖尿病症例群で陽性率に明らかな差がみられた.この理由として非糖尿病患者の膵組織・腎組織ではAGEsの沈着を抑えている代謝経路やレセプターの存在の可能性が示唆された.

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