昭和医学会雑誌
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他動運動訓練による末梢神経再生促進効果に関する基礎的研究
―axonotmesisとneurotmesisによる違い―
塚越 卓
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キーワード: 他動的訓練, 神経再生
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2004 年 64 巻 5 号 p. 456-459

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抄録

神経修復なしには回復の期待できないneurotmesisモデルと修復なしでも完全回復が期待できるaxonotmesisモデルを用いた他動運動訓練による神経再生促進効果について基礎的研究をおこなった.Wistar系ラット25匹をneurotmesis群10匹 (訓練群=5, 自然回復群=5) , axonotmesis群10匹 (訓練群=5, 自然回復群=5) , 無処置群=5匹の5群に分けた.Neurotmesisモデルは殿部で右坐骨神経を露出し, 神経を切断後, 顕微鏡下に8-0ナイロン糸にて神経上膜縫合を施行した.Axonotmesisモデルは露出した右坐骨神経を外科用持針器で3分間圧挫した.それぞれについて訓練施行群と自然回復群を設けた.訓練群は術後1日目より他動運動訓練を右膝関節に対し1セット最大可動域で5回, 1日昼・夕の2セットとし, 週5日の頻度で4週間継続実施した.訓練終了後, 5群共に再び坐骨神経を露出し, ハムストリングスにおける単一筋線維筋電図の活動電位の振幅, 潜時, 持続時間を測定し, 比較検討を行った.Axonotmesis群では振幅は自然回復群6.5±1.45mVに対し訓練群13.6±4.45mV.潜時は自然回復群1.5±0.14msecに対し訓練群1.3±0.15sec.持続時間は自然回復群3.2±0.28msec.に対し訓練群で2.4±0.15msecと全てに有意差 (p<0.01) を認めた.Neurotmesis群では振幅は自然回復群6.79±2.63mVに対し訓練群9.46±2.36mVと有意に増加 (p<0.01) を認めた.潜時は自然回復群1.65±0.57msecに対し訓練群1.65±0.29msec.持続時間は自然回復群3.42±0.92msec.に対し訓練群で3.43±0.83msecと有意差は認められなかった.なお, 無処置群の振幅, 潜時, 持続時間はそれぞれ17.1±3.02mV, 1.2±0.10msec, 2.05±0.34msecであった.以上よりaxonotmesis群では他動運動訓練による神経再生促進効果の可能性が示唆された.

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