昭和医学会雑誌
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“首下がり”の臨床的検討
野中 晶子河村 満
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2004 年 64 巻 5 号 p. 479-485

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抄録

“首下がり”を呈した自験7例を対象とし, “首下がり”の臨床像, 画像所見を検討し, 共通した臨床症候の抽出を試み, 基礎疾患, 発症・増悪因子, 経過について考察した.対象7症例は男性1例, 女性6例, 年齢は59歳から77歳, 基礎疾患は, パーキンソン病3例, 頚部脊椎症2例, 多系統萎縮症1例, 筋ジストロフィー1例であった.“首下がり”は基礎疾患の進行や原因薬剤の内服, 後頚部の炎症, 頚筋の疲労で徐々に発症, 増悪を示した.原因薬剤の中止及び頚部の安静, 炎症に対する抗生物質の投与, 後頚筋の筋力トレーニングで改善がみられた.多系統萎縮症症例では“首下がり”は不変であったが, 他の6症例の予後はおおむね良好であった.“首下がり”は各種の疾患で生じ, heterogeneousな症候と言うことができる.自験例では頸部の筋力低下, 筋萎縮, 筋緊張低下, 筋強剛等を認めた.“首下がり”症候は頚部傍脊椎筋の異常によって生じ, 後頚筋の筋力低下・筋萎縮によるものと, 前頚筋の過剰な緊張によるものがあると思われた.さらに“首下がり”と“腰曲がり”とが同一の病態基盤をもつ可能性を指摘したaxial myopathyの概念があることを指摘した.

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