昭和医学会雑誌
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黄色靭帯における変性の画像病態とacidic Fibroblast growth factor (FGF-1) の発現変化
市川 二郎平泉 裕宮岡 英世立川 哲彦
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2005 年 65 巻 2 号 p. 151-159

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抄録

黄色靭帯の肥厚は, 脊柱管狭窄の主な後方圧迫要因として臨床的に重要であり, 腰部脊柱管狭窄症の主な原因の一つとして挙げられる.組織学的には弾性線維と, その構成成分であるelastinを多量に含んでおり, 加齢により膠原線維の増加や軟骨組織などへの化生を生じる.しかしそのような組織変化の分子生物学的メカニズムは未知なところも多い.一方, 線維芽細胞増殖因子 (fibroblast growth factor; FGF) は中胚葉由来の細胞である線維芽細胞や血管内皮細胞, 上皮細胞に増殖刺激作用を示すことが知られており, 現在少なくとも23種類あると考えられ注目されている.今回我々は, 黄色靭帯におけるFGF-1を免疫組織学的に検討し, またFGF-1の発現と単純X線側面像, MRIにおける画像所見とを比較検討した.症例は腰部脊柱管狭窄症や腰椎変性辷り症, 腰椎椎間板ヘルニアの手術を施行した11症例, 摘出した黄色靭帯16例である.手術時年齢は24~79歳, 平均年齢65.7歳, 性別は男性6例, 女性5例であった.腰部脊柱管狭窄症や腰椎変性辷り症, 腰椎椎間板ヘルニアなどに対し拡大開窓術, 椎間板摘出術を施行した際, 術中採取した黄色靭帯組織を標本として用いた.標本は採取後にO.C.T compoundを用い包埋し凍結固定した.その後, 4μmの凍結切片を作製し, 通法に従いH-E染色, アルシアンブルー染色を行った.また, FGF-1に対して免疫組織染色を行い, 各組織切片についてFGF-1の染色陽性細胞の数に基づいて分類した.黄色靭帯の画像分類については単純X線側面像にて骨棘の程度を, MRIにて黄色靭帯の肥厚度, 脊柱管の狭窄度を分類しFGF-1との関係を調べた.その結果, 黄色靭帯の変性の強い椎弓側にFGF-1の発現を高率に認めた.MRI像にて靭帯の肥厚が強くなるほどFGF-1の発現率は高度になった.脊柱管狭窄の程度と骨棘の程度に対しては明らかな関与は認められなかった.以上のことより黄色靭帯の組織変化にFGF-1は関与しており, MRIの画像変化と強い相関性を示していた.

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