昭和医学会雑誌
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頭蓋骨縫合線欠損に対してリン酸カルシウム骨ペーストを用いたラット頭蓋骨での実験的研究
荒尾 直樹伊藤 芳憲角谷 徳芳久光 正
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2006 年 66 巻 1 号 p. 22-28

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抄録

骨欠損の再建において, 人工補填物は現在広く用いられている.自家組織を用いない利点として, ドナーの犠牲が無い, 手術時間の短縮化などのメリットがある.その反面, 感染のリスクや組織親和性の問題などのデメリットをもつ.リン酸カルシウム骨ペースト (CPP) は粉剤と液剤を混和することにより自己硬化型ペーストとなり, 体内でハイドロキシアパタイトに構造を変える人工補填物であり, 2000年より市販されている.高い組織親和性を持ち術中に求める形状に成形可能であり, 体内で徐々に生体組織に置換されていくという特長から, 整形外科領域のみならず, 頭蓋顎顔面外科領域でも応用が広がっている.今回われわれは, 成長期のラット頭蓋骨冠状縫合に欠損を作成し, CPPを充填した場合の影響を調査する実験を行い, 組織学的, 形態学的に検討した.組織学的観察ではCPPは周囲骨組織と間隙なく存在し, 経時的に骨組織の侵入が観察されたが, CPP周囲の骨組織が骨性に癒合することはなかった.CPPを充填しなかった群では, 縫合線欠損部は骨性に癒合を起こしている様子が観察された.形態学的観察ではCPPを充填した群は充填しなかった群と比較して充填部周囲の頭蓋骨の成長に有意に悪影響を及ぼさないという結果を得た.本研究の結果より, CPPは成長期における生体頭蓋への人工補填材料として極めて有用であることが判明した.

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