S医療短期大学の3年次の看護学生80名を対象に, 不安感の尺度であるSTAI, Locus of Control (LOC) , 及びライフイベント尺度を臨地実習前後に調査し, 実習前後でのそれら性格尺度の変化と実習前後のそれぞれの時期における性格尺度と実習成績との関係を検討した.臨地実習の成績は実習終了後の評価を本人の同意のもとに収集し, LOCについてはExternal群, Intermediate群ならびにInternal群とし, またSTAI特性不安と状態不安については高不安群と低不安群とした.ライフイベント数は得点により少ない群, 中間群, 多い群の3群とし, t検定と重回帰分析を川いて分析した.その結果, STAI不安尺度の経時的変化では, 特性不安は実習終了後に低下しており状態不安は逆に上昇していた.また重回帰分析の結果において実習成績に最も多くの科目で有意な関連を認めたのはLOCであった.性格尺度を群別に比較した結果, 実習前後共に成人・老年看護学 (周手術期) 実習と実習後の在宅看護論実習以外の全ての科目でlnternal群がExternal群より実習成績が良い傾向を認められ, 実習前で基礎看護学実習と小児看護学実習に有意差が認められた.STAI状態不安においては実習前ではすべて高不安群が低不安群より実習成績が良い傾向が認められ, 基礎看護学実習・母性看護学実習および実習総合点で有意差が認められた.さらに実習後では小児看護学実習と課題別実習を除いて同様の傾向が認められた.なお, 実習後のLOCとSTAIは共に全ての科目において有意差は認められなかった.実習前のSTAI特性不安では母性看護学実習において有意差が認められたもののその他の科目では有意差は認められなかった.なお, ネガティブ・イベント数とポジティブ・イベント数は実習前後において実習科目別に特定の傾向は認められなかった.看護学実習の前後においてLOCの型が変化している学生が約40%あり看護教育において望ましいと考えられるInternalな傾向をもつよう指導することによって成績の向上を図ることの可能性が示唆された.
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