昭和医学会雑誌
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66 巻, 1 号
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  • 勝又 義直
    2006 年 66 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 武田 光志, 荒井 裕一朗, 長井 友子, 安原 一, 山下 衛
    2006 年 66 巻 1 号 p. 12-21
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    乳幼児がボタン型アルカリ電池やコイン型リチウム電池を誤飲する事故がしばしば発生する.その電池が消化管に停滞し, 消化管壊死を起す.その原因は電池が接触する組織の消化管分泌液や電解質液に電気が流れ, 電気分解が起こり水酸化ナトリウム等のアルカリが生成される.単位時間に流れる電気容量に比例し, アルカリの量は生成するため, 電池の電圧を低下させることが消化管壊死の程度を軽減すると考えた.電池を伝導性に富む素材でショートさせると, 電圧が低下することに着目し, イヌの食道にコイン型リチウム電池を留置し伝導性に富む黒鉛を用いて食道壊死の程度を検討した.6頭の犬を食道に電池を留置した群 (電池留置群, n=3) と留置した電池の周囲に5%黒鉛生食懸濁液を注入した群 (黒鉛処置群, n=3) に分けた.黒鉛処置群はさらに電池の挿入と同時に5%黒鉛生食懸濁液を注入した場合 (n=1) と電池挿入後1分後に5%黒鉛生食懸濁液を注入した場合 (n=2) とし, それぞれ電池留置60分後に食道組織を肉眼的および顕微鏡学的に観察した.電池留置群は肉眼的に, 電池との接触部分で組織の炭化が観察された.顕微鏡学的所見としては粘膜上皮から筋層深部の外縦筋層に至るまでに変性壊死が認められた.黒鉛処置群のうち電池の留置と同時に5%黒鉛生食懸濁液を注人した場合は, 肉眼的には電池外周部と接した組織の一部に充血が見られた.それ以外の部分に色調の変化は認められなかった.顕微鏡的所見では粘膜上皮から外縦筋層までに変性壊死は認められなかった.電池留置1分後に5%黒鉛生食懸濁液を注入し場合は, 電池の外周部が接触した組織で部分的に糜爛と潰瘍が肉眼的に観察された.顕微鏡学的には電池外周部が接触した組織では粘膜の消失が観察された.粘膜から筋層まで変性が見られたが電池留置群に比し, その程度は軽度であった.以上のことから, 5%黒鉛生食懸濁液を電池の周囲に注入し電池をショートさせると, 電池による食道壊死に対して組織保護効果があることが明らかとなった.ボタン型アルカリ電池やコイン型リチウム電池の誤飲時に起こる食道組織の壊死に対し, 黒鉛粉末懸濁液の投与が電池を除去するまでの対処法として有効な手段であることが示唆された.
  • 荒尾 直樹, 伊藤 芳憲, 角谷 徳芳, 久光 正
    2006 年 66 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    骨欠損の再建において, 人工補填物は現在広く用いられている.自家組織を用いない利点として, ドナーの犠牲が無い, 手術時間の短縮化などのメリットがある.その反面, 感染のリスクや組織親和性の問題などのデメリットをもつ.リン酸カルシウム骨ペースト (CPP) は粉剤と液剤を混和することにより自己硬化型ペーストとなり, 体内でハイドロキシアパタイトに構造を変える人工補填物であり, 2000年より市販されている.高い組織親和性を持ち術中に求める形状に成形可能であり, 体内で徐々に生体組織に置換されていくという特長から, 整形外科領域のみならず, 頭蓋顎顔面外科領域でも応用が広がっている.今回われわれは, 成長期のラット頭蓋骨冠状縫合に欠損を作成し, CPPを充填した場合の影響を調査する実験を行い, 組織学的, 形態学的に検討した.組織学的観察ではCPPは周囲骨組織と間隙なく存在し, 経時的に骨組織の侵入が観察されたが, CPP周囲の骨組織が骨性に癒合することはなかった.CPPを充填しなかった群では, 縫合線欠損部は骨性に癒合を起こしている様子が観察された.形態学的観察ではCPPを充填した群は充填しなかった群と比較して充填部周囲の頭蓋骨の成長に有意に悪影響を及ぼさないという結果を得た.本研究の結果より, CPPは成長期における生体頭蓋への人工補填材料として極めて有用であることが判明した.
  • 中山 和美, 寺田 眞廣, 星山 佳治, 菅原 崇博, 渡辺 理江, 神山 吉輝, 川口 毅
    2006 年 66 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    S医療短期大学の3年次の看護学生80名を対象に, 不安感の尺度であるSTAI, Locus of Control (LOC) , 及びライフイベント尺度を臨地実習前後に調査し, 実習前後でのそれら性格尺度の変化と実習前後のそれぞれの時期における性格尺度と実習成績との関係を検討した.臨地実習の成績は実習終了後の評価を本人の同意のもとに収集し, LOCについてはExternal群, Intermediate群ならびにInternal群とし, またSTAI特性不安と状態不安については高不安群と低不安群とした.ライフイベント数は得点により少ない群, 中間群, 多い群の3群とし, t検定と重回帰分析を川いて分析した.その結果, STAI不安尺度の経時的変化では, 特性不安は実習終了後に低下しており状態不安は逆に上昇していた.また重回帰分析の結果において実習成績に最も多くの科目で有意な関連を認めたのはLOCであった.性格尺度を群別に比較した結果, 実習前後共に成人・老年看護学 (周手術期) 実習と実習後の在宅看護論実習以外の全ての科目でlnternal群がExternal群より実習成績が良い傾向を認められ, 実習前で基礎看護学実習と小児看護学実習に有意差が認められた.STAI状態不安においては実習前ではすべて高不安群が低不安群より実習成績が良い傾向が認められ, 基礎看護学実習・母性看護学実習および実習総合点で有意差が認められた.さらに実習後では小児看護学実習と課題別実習を除いて同様の傾向が認められた.なお, 実習後のLOCとSTAIは共に全ての科目において有意差は認められなかった.実習前のSTAI特性不安では母性看護学実習において有意差が認められたもののその他の科目では有意差は認められなかった.なお, ネガティブ・イベント数とポジティブ・イベント数は実習前後において実習科目別に特定の傾向は認められなかった.看護学実習の前後においてLOCの型が変化している学生が約40%あり看護教育において望ましいと考えられるInternalな傾向をもつよう指導することによって成績の向上を図ることの可能性が示唆された.
  • ―東京都夜間常設HIV検査相談センターにおける非感染受検者情報の分析, 2000-2002年―第2報
    橘 とも子
    2006 年 66 巻 1 号 p. 38-46
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年, 日本における新規HIV感染者数増加率が上昇を続けており, HIV検査相談施策の一層の充実が対策上の課題である.本研究では東京都夜間常設HIV検査相談センター (=以下「南新宿検査・相談室」) における匿名受検者のうち, 推奨時期より早いタイミングの受検者 (=S症例群) の特徴を明らかにすることにより, 自発的HIV検査相談 (=以下“HIV-VCT”) サービスにおける課題を探ることを目的とした.2000年~2002年の抗体陰性受検者に対し行った自記式質問紙調査に対する回答21.406件に対し, 性。年齢階級感染不安要因, 検査回数コンドーム使用頻度を説明変数とし, S症例群 (18.3%) および推奨時期の受検者 (=以下「推奨時期群; (63.5%) 」) についてロジスティック回帰分析を行った.推奨時期群に比しS症例群は, (1) 「20歳代」 (OR: 0.68) ・「30歳代」 (OR: 0.61) に比べ10歳代に多く, (2) 1感染不安要因「異性間性的接触」に比べ「同性間性的接触」 (OR: 1.16) が有意に多く, さらに (3) HIV検査回数が多い程多い傾向が認められ, (4) コンドーム使用頻度が低い程多い傾向が認められた.本研究の解析によりS症例群の特徴は, (1) 10歳代に多い可能性が示唆され, (2) 感染不安要因「異性間性的接触」に比べ「同性間性的接触」が多く, (3) 検査回数増に従って多く, (4) コンドーム使用頻度が低いほど多いと考えられた.今後はさらに多様なHIV検査相談の受検行動パターンを想定して, 各々に応じた予防介入の可能性を探るべきと思われた.
  • 梅本 岳宏, 幕内 幹男, 武内 聖
    2006 年 66 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性.平成14年9月25日右下腹部痛が出現した.痛みは一時軽快したが, 27日夜から28日朝にかけて痛みが増悪し, 近医を受診した.虫垂炎と診断され, 抗生剤を処方されて帰宅した.その後症状は一時軽快したが, 9月30日再び右下腹部痛が出現し再診した.限局性腹膜炎の診断で手術目的にて同日当院に紹介入院となった.腹部単純X線ではfree airや異物陰影は認められず, 腹部CT検査で右下腹部にlow densityの腫瘤を認め, 内部に直線状のhigh densityの異物陰影が認められた.魚骨による消化管穿孔と診断し, 同日緊急手術を行った.開腹すると中等量の膿性腹水を認め。Treitz靱帯から220cmの部位に, 腸間膜側に穿孔する長さ2.5cmの針状の魚骨を認めた.小腸部分切除術と洗浄ドレナージ術を施行した.本症例は患者からの病歴聴取と腹部CT像の注意深い読影によって術前診断が可能であった.
  • 中尾 健太郎, 角田 明良, 竹中 弘二, 諸原 浩二, 鈴木 直人, 大原 一規, 山崎 勝雄, 草野 満夫, 小川 正純, 井廻 道夫
    2006 年 66 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    われわれは慢性リウマチ (以下RAと略す) の疼痛コントロールのため長期にわたり多種の非ステロイド性抗炎症剤 (以下NSAIDsとする) を服用したNSAIDs起因性下部消化管多発性潰瘍隔膜様瘢痕狭窄進行症例に対し右半結腸切除を行いQOLが改善した症例を経験したので報告する.症例は75歳, 女性.RA疼痛コントロールのため多種のNSAIDsを長期にわたり服用していたところ貧血ならびに上行結腸の狭窄と潰瘍と横行結腸の狭窄と潰瘍を認め, NSAIDsの長期服用による大腸潰瘍瘢痕隔膜様狭窄が考えられた.内視鏡によるバルーン拡張術も効果がみとめられず, 右半結腸切除術を行った.術後2年経過しRA疼痛コントロールのため術後より再開されたNSAIDsを服用しているものの再発ならびに貧血は認められず, QOLの改善が認められた.
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