昭和医学会雑誌
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非保護左主幹部病変に対する待機的経皮的冠動脈インターベンションの初期および長期成績
(シロリムス溶出性ステントの有効性について)
荒木 浩落合 正彦小原 千明山本 明和斎藤 重男星本 剛一御子柴 幸磯村 直栄芦田 和博
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2008 年 68 巻 5 号 p. 272-279

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抄録

非保護左主幹部 (unprotected left main coronary artery; UPLMCA) 病変に対する経皮的冠動脈インターベンション (percutaneous coronary intervention; PCI) の初期, 長期成績を薬剤溶出性ステントであるシロリムス溶出性ステント (sirolimus-eluting stent; SES) 群と従来のベアメタルステント (bare metal stent; BMS) 群とで比較検討した.対象は2001年1月から2006年3月までに待機的PCIを施行した新規UPLMCA病変連続45例 (SES群24例, BMS群21例) で, 患者背景, 病変形態, PCI手技, 初期および長期成績を両群間にて比較, 検討した.両群とも全例でPCI手技成功が得られ, 死亡, Q波梗塞, target lesion revascularization (TLR) を含めた院内合併症は両群とも認めなかった.6か月から12か月後までに, SES群ではTLRとしての冠動脈大動脈バイパス術 (coronary artery bypass grafting; CABG) が少ない傾向にあった (0%VS.16.7%, p=0.05) .両群間に死亡 (0%vs.2.2%, p=0.34) , 再狭窄 (9.5%vs.20.8%, p=0.29) , TLR (4.8%vs.20.8%, p=0.14) に有意差を認めなかった.定量的冠動脈造影法ではSES群で対照血管径 (3.47vs.3.98, p=0.01) , 術後最小血管径 (3.53mmvs.4.13mm, p<0.01) が有意に小さく, 病変長 (18.7mmvs.14.0mm, p=0.02) が有意に長かった.以上の結果から, UPLMCA病変に対するPCIの初期, 長期成績は良好であり, SESによりTLRとしてのCABGが減少し, 治療対象となる血管径が小さく, 病変長が長くなったことで, 同部へのPCI治療適応の拡大が示唆された.

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