2016 年 54Annual 巻 27PM-Abstract 号 p. S167
単離された心筋細胞から拍動する立体的な心筋組織への構築は新たな再生医療や薬剤スクリーニングへの応用として注目されている。本研究では、温度に応答して細胞脱着可能な培養皿を用いて細胞をシート状に形成し、その細胞シートを積層化することによって立体心筋組織の構築を試みている。しかしながら、単に細胞シートを重ねるだけでは高密度の細胞群であるために酸素・栄養素の供給や老廃物の除去が困難である。そこで、血管内皮細胞で構成したネットワーク付き細胞シートを内皮細胞含有の微小流路付きゲル上に培養することで、細胞シート内血管ネットワークとゲル内血管ネットワークを形成させ培養液灌流可能な血管網付き立体心筋組織の作製ができないかを検討した。本実験ではヒトiPS由来心筋細胞、繊維芽細胞、内皮細胞を共培養した細胞シートを使用し、微小流路への灌流量は生体内細血管に生じるずり応力から0.3 mL/minに設定し7~14日間培養した。灌流培養した後、培養積層化組織をHE染色およびCD31染色にて観察を行った結果、細胞シートおよびコラーゲンゲルの内皮細胞が浸潤・管腔化してネットワークが発達した。さらに、心筋細胞シートの自律拍動も肉眼で確認された。この結果から、灌流可能な血管網を導入することで細胞からの立体心筋組織創出の可能性を示した。