生体医工学
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抄録
ラマン散乱顕微鏡による細胞/組織の分子イメージング
藤田 克昌
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2016 年 54Annual 巻 28AM-Abstract 号 p. S267

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抄録

ラマン散乱分光法は分子や結晶格子の振動を検出できるため、生体分子から無機結晶まで様々な材料の分析に活用されてきた。しかし、その発生効率の低さのため、ラマン散乱測定には数秒の露光時間が必要となり、多くの測定を繰り返す画像計測には、ラマン散乱の応用は進んでいなかった。近年になって高出力レーザーや高感度かつ低ノイズな2次元検出器が登場し、ラマン散乱による分光画像計測が比較的容易になり、応用研究が進みはじめた。我々のグループでは、試料上の多数の点から同時にラマン散乱スペクトルを計測するスリット走査型ラマン散乱顕微鏡を開発し、数分から数十分の時間で高解像度のラマン散乱像を得ることに成功した。開発した顕微鏡を用いて細胞内のcytochrome cをラマン散乱により特異的に検出可能なことを示し、アポトーシスにおけるcytochrome c 動態の無標識観察に応用した。また、骨芽細胞、筋芽細胞、およびES細胞の分化状態をラマン散乱スペクトルおよびその空間分布で示すことが可能であることを示した。さらに、ラマン散乱で特異的に観察可能なラマンタグイメージング法を開発し、従来の蛍光法では観察が困難な塩基、脂質等の小分子の観察が可能であることを示した。講演では、ラマン散乱観察の高速化の原理、および上記の応用研究に加え、空間分解能のさらなる向上、およびラマン散乱観察の広視野化についても紹介する。

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© 2016 社団法人日本生体医工学会
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