生体医工学
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抄録
細胞シート積層化技術を用いたiPS細胞由来ヒト心筋組織の構築
菊地 鉄太郎松浦 勝久清水 達也
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2017 年 55Annual 巻 3PM-Abstract 号 p. 201

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人工多能性幹細胞(iPS細胞)から心筋細胞への分化誘導法が確立しつつあることに伴い、iPS細胞由来心筋細胞を用いた医薬品候補物質の評価やin vitro病態モデル構築の実現可能性が高まっている。本研究では細胞シート積層化技術を用いてiPS細胞由来心筋細胞から心筋組織を構築することで、単体の細胞では難しい力学的な評価が可能な系の構築を行った。ヒトiPS細胞を心筋細胞へ分化誘導後、薬剤耐性遺伝子を利用して純化を行った。心筋細胞を温度応答性培養皿に播種し、心筋細胞シートを作成した。細胞シート積層化技術により、心筋細胞シートを別途作製したヒト真皮線維芽細胞シートへ積層化した。積層化した細胞シートを低温処理により回収し、穴をあけたフィルムへ穴を覆うように再接着させた。専用のチャンバーへ移し、フィルムへ圧力を掛けることで、穴を覆った部分の細胞シートをドーム状に膨らませ、心筋細胞の自立拍動に伴う圧力の変動を計測した。ドーム状心筋組織は0.1~1 mmHg程度のベース圧力を負荷することで膨らませることができた。加圧チャンバーを外気に対して開放した状態では心筋組織の収縮は目視で観察できたが、自立拍動による圧力変動は計測できなかった。一方、加圧チャンバーを密閉した状態では心筋組織の収縮はほとんどなかったが、自立拍動による圧力変動が計測できた。圧力変動はベース圧力により変化したが、心筋細胞シート1層では最大0.3 mmHgであった。

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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