生体医工学
Online ISSN : 1881-4379
Print ISSN : 1347-443X
ISSN-L : 1347-443X
抄録
脳血管障害例におけるNIRS計測の問題点
佐藤 豊村山 優太胡 莉珍門脇 傑宇川 義一酒谷 薫
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 55Annual 巻 3PM-Abstract 号 p. 217

詳細
抄録

時間分解近赤外分光法(Time Resolved Near Infrared Spectroscopy: TNIRS)は、ピコ秒の近赤外光と光拡散方程式を用いて安静時ヘモグロビン(Hb)濃度を計測できる利点がある。TNIRSは、脳機能研究、くも膜下出血後の血管攣縮の検出、Hb濃度の全頭マッピング等に応用されてきたが、大脳皮質に解剖学的異常を有していない症例が大部分である。本研究では、画像診断にて大脳皮質に脳梗塞を有する症例のHb濃度及び光路長を計測し、大脳皮質の解剖学的異常がNIRS計測に与える影響について検討した。対象は福島県立医大神経内科に入院した脳梗塞患者5名(男性2名、女性3名、年齢59.8 ±27.0歳)である。測定プローブを国際脳波10-20法に基づき様々な位置に設置して計測したHb濃度と光路長(760, 800, 830nm)を病側と正常側で比較した。正常側の脱酸素化Hb濃度は病側よりも有意に高値を示したが(p=5.7×10-5)、酸素飽和度は病側よりも有意に低値であった(p=2.5×10-4)。酸素化Hb濃度及び総Hb濃度は有意差を認めなかった。一方、光路長(760, 800, 830nm)は全ての波長で正常側が有意に低値を示した。本研究結果は、NIRSは大脳皮質に解剖学的異常がある場合は大脳皮質のHb濃度を正確に計測していない可能性を示唆している。

著者関連情報
© 2017 社団法人日本生体医工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top