生体医工学
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抄録
低拘束衣服型デバイスを用いた社会的行動に伴う小児の心拍変動解析
高橋 佳奈子松田 壮一郎鈴木 健嗣
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2017 年 55Annual 巻 3PM-Abstract 号 p. 223

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抄録

本研究では,低拘束な衣服型心電位計測デバイスを用いた社会的行動に伴う小児の心拍変動解析を目的とする.自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorders, ASD)を有する小児(以下,ASD児)の多くは自身の情動表出に困難を示すため,療育者によるASD児の情動状態認知に困難が生じている.人の情動状態は,客観的に観察可能な行動や表情などの身体的反応のほかに自律神経活動の変化によっても捉えられ,自律神経活動は心拍変動解析によって推定可能である.そこで,ASD児に対して生活環境において適応可能な心電位計測デバイスとして,袖に伸縮性素材を有する小児用衣服を用いた着用型デバイスを提案する.開発したデバイスは,袖部の伸縮性素材によって布電極を皮膚に密着させ,双極誘導により心電位信号を取得する.生活環境において計測した心電位信号は体動アーチファクトを多く含むため,心拍変動解析は解析区間を15秒とした時系列解析によって行い,R波検出に基づく信頼区間判定により信頼度の向上を図る.本稿ではまず,成人を対象とした性能評価実験を通して,副交感神経活動指標の一つであるRMSSDの導出精度を示す.さらに,療育活動中のASD児を対象とした実証実験を通し,開発したデバイスをASD児が容易に着用可能であり,療育活動中における自律神経活動の状態変化を推定可能であることを示す.

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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