生体医工学
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抄録
磁気浮上遠心血液ポンプ設計のためのインペラ変位を考慮した数値流体解析
信太 宗也増澤 徹長 真啓
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2017 年 55Annual 巻 3PM-Abstract 号 p. 238

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抄録

我々は循環補助治療のために血液適合性の高い磁気浮上血液ポンプを開発している.磁気浮上遠心血液ポンプでは,インペラはその周囲の非平衡圧力場により径方向に変位する可能性がある.その変位によりインペラとケーシング間のクリアランスが狭くなると,そこで血液への高せん断負荷が発生し,溶血の危険性が高まると共にポンプ性能も変化する可能性がある.従って,磁気浮上ポンプではインペラの変位を考慮した流路設計を行う必要がある.本研究では,数値流体解析を用いて,浮上インペラの位置が偏心した場合のポンプ水力性能や圧力不平衡力,せん断応力分布とポンプケーシングジオメトリの関係を調べた.ケーシングジオメトリとしては,ダブルボリュートを用い,舌部位置やクリアランスを変更した影響を調べた.その結果,インペラが径方向に変位した場合,径方向圧不平衡力は著しく増大し,それはダブルボリュートによっても抑制できないことが分かった.一方,適切なケーシングジオメトリを採用することで,インペラ変位がポンプの水力性能やせん断応力分布に与える影響を低減することも分かった.例えば,クリアランスを1 mmから2 mmに拡大することにより,インペラ変位による水力性能低下は比較的少なく抑えられる.以上より,クリアランス等のケーシングジオメトリを考慮することで,ポンプの水力性能と血液適合性のトレードオフ設計を有利に行える可能性が示された.

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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