2017 年 55Annual 巻 3PM-Abstract 号 p. 240
脈波伝播時間は血圧や末梢血管の調節機能の情報を含み,糖尿病などの自律神経疾患患者の自律神経機能を評価する際に用いられることがある.近年,顔や掌など皮下に多くの細動脈や毛細血管が走行している部位のカメラ映像から皮膚の色の時間変化を解析することによって脈波を抽出し心拍数や脈波伝播時間などの生理指標が得られる手法が提案されている.しかし,背中や腕,足といった顔や掌に比べて細動脈や毛細血管が少ない部位では皮下の血液容積の変化を抽出することが困難である.そこで,本研究ではこれまで脈波を抽出することが困難であった部位であっても安定的に脈波を抽出することを目指し,信号分離法である特異スペクトル解析を用いて脈波成分とノイズを分離し脈波成分のみを抽出する方法を提案した.その結果,従来の周波数フィルタでの抽出法と比較して提案手法では従来の接触式のセンサから得られた指尖脈波との相関係数がおよそ15%程度有意に上昇し,比較的脈波の抽出が困難な部位からであっても接触式センサに近い脈波を抽出することができた.