2017 年 55Annual 巻 4AM-Abstract 号 p. 272
発表者らは動脈硬化性狭窄に対する新しい治療デバイスとして短時間加熱型バルーンPhoto-thermo Dynamic Balloon (PTDB)を提案している。PTDBはバルーン内でのレーザ照射と潅流溶液によって血管壁を短時間に均一に加温する。加温によるコラーゲン熱変性を利用して血管壁に機械的損傷を与えずに軟化拡張を行う構想である。これまでのin vivo実験において血管拡張の際に中膜の平滑筋細胞が伸展固定されることが明らかになったが、伸展固定が平滑筋細胞に与える影響は調査されていない。本研究ではPTDBの慢性期治療効果を検討するために、加温と伸展を同時に負荷した際の平滑筋細胞のin vitroでの障害評価を目的とした。本研究では、増殖停止状態で伸展を負荷した平滑筋細胞における活性評価方法を検討した。ブタ大動脈由来の平滑筋細胞をストレッチチャンバーに4.0×104 cells/cm2で播種し、0.5 %の血清を添加した培地内で96時間培養することで増殖停止状態にした。チャンバーを伸展系に設置し、自動ステージを用いて0.7 mm/sで0-50 %の伸展を負荷した。伸展固定24時間後から4日間の細胞活性変化をWST-8溶液の吸光度測定により評価した。その結果、伸展固定によって細胞の活性が有意に上昇する傾向が見られたが、伸展率による活性の違いはなかった。細胞は伸展刺激によって活性が上昇することが報告されている。細胞増殖停止状態においても細胞の活性および増殖能を評価できると示唆された。