生体医工学
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抄録
間質中タラポルフィンナトリウム濃度推定のための3-コンパートメント薬物動態モデル
宇野 優子小川 恵美悠荒井 恒憲
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2017 年 55Annual 巻 4AM-Abstract 号 p. 297

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抄録

我々は、間質中で光増感反応を起こす治療において有効な治療を得るための条件を決定するために、間質中薬剤濃度変化を推定することを目的に、血漿-間質-細胞の3-コンパートメントを有するイヌの薬物動態モデルを開発した。我々の提案する治療は従来の細胞内光増感反応を用いた治療とは異なり、薬剤が細胞外の間質中に分布した状態で光増感反応を起こす。タラポルフィンナトリウム投与後、薬剤の分布は血漿から間質、細胞へと経時的に変化する。間質中薬剤濃度の知見はこれまでに無いため有効な治療を得る条件を決定することができない。そこで測定した血漿中薬剤濃度および、血漿・間質・細胞内薬剤濃度の混合情報である組織中薬剤由来の蛍光測定結果を用いて、血漿-間質-細胞の3-コンパートメントを構築することで、間質中薬剤濃度変化を推定した。各コンパートメントの濃度時間変化に関する微分方程式より求まる解と実測値の差の二乗和が最小となるようにフィッティングを行い、コンパートメント間の速度定数を決定した。構築した3-コンパートメントモデルにおいて実測値とのフィッティング動作をR2=0.98で確認した。このモデルを用いて、今までの知見では得ることができなかった間質中薬剤濃度を推定することができた。本手法により開発する計算モデルにより、間質中で光増感反応を起こす治療での条件設定を行えると思われる。

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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