生体医工学
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抄録
起立時の心拍‐筋ポンプ間カップリングと循環動態の解析
菅原 裕貴鵜川 成美齊藤 直新関 久一
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2017 年 55Annual 巻 4AM-Abstract 号 p. 298

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抄録

起立ストレス時の静脈貯留を低減する上で重要な役割を果たしていると考えられているのは筋ポンプである。筋ポンプ効果が有効に働くためには静脈還流のタイミングと心周期の拡張期がカップリングする必要があるのではないかと推察される。これを検証するため,下腿部への周期的なカフ圧負荷(RCI)で筋ポンプを模擬し,心拍-カフ圧リズム間のカップリングと循環系動態との関連を調査した。13名の若年健常者をリクルートし,心電図,呼吸流速、血圧、およびカフ圧力を計測した。被験者は座位姿勢で3分間安静後、5分間起立,その後3分間座位姿勢を保った。起立時から120 mmHgの圧負荷でRCIを行った。静止起立を対照実験(CTL)とし,3種類の周期(6、8、10秒)でRCIを行う実験をランダムに行った。カップリングはカフ圧由来の心拍変動の位相コヒーレンス(&lambda)で評価した。心拍間隔(RRI)と一回拍出量(SV)を算出し,心拍変動から心臓自律神経活動を推定した。CTLでは座位から立位にかけてRRI短縮やSV低下を示したが、RCIはRRI低下を有意に抑制し,SV低下を軽減させた。8秒周期のRCIでは起立時の副交感神経活動の低下が最も抑制され、&lambdaは高値を示した。RCIによる副交感神経活動の亢進は静脈還流量の増加を示唆するものであり,カップリングは静脈還流量の増加に寄与しているものと推察された。

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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