生体医工学
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抄録
光学的脳機能計測法を用いた高齢者の認知機能評価に関する研究:近赤外時間分解分光法を用いた検討
胡 莉珍佐藤 豊小室 有輝唐 尊一姜 琳琳酒谷 薫
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2017 年 55Annual 巻 4AM-Abstract 号 p. 310

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少子高齢化が進む現代社会において,認知症患者の増加は喫急の問題である.2025年には,全国の軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment: MCI)の有病者数が約700万人を突破すると推計されている. 高齢者の認知機能を早期に診断し,発症や症状の悪化を予防することは極めて重要な課題である.本研究は,福島県内の某リハビリ病院の入院及び外来患者291名 (平均年齢73.0±12.5歳)を対象とし, 近赤外分光法の一種である近赤外時間分解分光法(Time resolved near infrared spectroscopy: TNIRS) を用いて計測した前頭前野の安静時Hb濃度と, 問診式テストによる全般性認知機能 (MMSE), ワーキングメモリ機能(タッチエム)との相関性を検討した. さらに,TNIRSにより計測した安静時Hb濃度から全般性認知機能を予測する可能性を検討した. TNIRSで計測した前頭前野の安静時Hb濃度は, 全般性認知機能MMSEスコア及びワーキングメモリ機能との間に有意な正の相関性が認められた.二項ロジスティック回帰分析を用いて導出した回帰モデルは,TNIRSの測定データ,年齢,性別から73.2%の確率で認知症疑いの群を予測可能であった.本研究により,TNIRS測定は認知症を客観的に予測できる可能性が示唆された.

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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