2017 年 55Annual 巻 4AM-Abstract 号 p. 311
当社が「身だしなみセミナー」として、岩手県の老人施設で初めて、高齢女性に化粧を施したのは1975年のことである。その後も、全国各地の事業所で、それぞれの地域にある老人施設に向けたボランティア活動として、高齢者向けの美容セミナーが続けられていた。こうした活動を通じて、継続的に化粧を続ける事により、表情が明るくなるだけでなく、認知症の周辺症状の緩和や要介護者の日常生活行動の改善など、高齢者のQOL向上に役立つことが明らかになった。40年近くが経った現在、女性のライフステージや愁訴の違いに合わせた様々な化粧セラピーが提案されている。この間、我々は、化粧の連用は、若い世代の女性にも、ストレスの緩和効果、認知機能低下の予防効果があることを医工学的手法を用いて明らかにし、その成績の幾つかを本学会で報告して来た。このようなエビデンスに基づき、高齢者だけでなく、若年層からの予防も含めた、サスティナブルなソーシャルビジネスを目指したライフクォリティ事業を立ち上げ、2013年から、順次、全国エリアに展開し、郡山市で進められている地域包括ケアの試みにも一部が活用されている。ここでは、これまでの化粧の地域包括ケア活用の歴史と研究成果をまとめ、現状と今後について展望したい。