2017 年 55Annual 巻 4AM-Abstract 号 p. 312
我々の実験の目的は、多義的旋律の認識を通じて、旋律の認識過程を研究することである。多義的旋律とは複数種類の旋律として認識できるひとつの旋律である。多義的なものの例として視覚的に有名なのはネッカーの立方体である。我々の実験ではA4,E5が連続してC5が断続的に流れる音を用いた。この音を聴くと、C5-A4-C5-A4(DOWN)、C5-E5-C5-E5(UP)、もしくは断続するC5音(NEUTRAL)の3種類の聞こえ方がある。先の2つのように聞こえた場合には錯聴が起き、一つの音を2種類の旋律として聞くので多義的である。実験では最初聞く旋律を誘導するため、2秒の先行刺激としてC5-A4もしくはC5-E5-を4回繰り返すものを用いた。その1音の継続時間は0.25秒で、その後60秒の多義的部分が続くものを1刺激とした。この刺激を50回提示した。被験者は多義的旋律を聴いている間、自分が聞こえている旋律が変化したらボタンを押した。ボタンは3種類あり、それぞれUP, DOWN, NEUTRALである。ボタンを押した時刻の系列から、状態遷移時間の分布を求め、状態遷移モデルのパラメータ推定を行った。さらにそのパラメータが時間依存性をもつかどうか検討した。