生体医工学
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抄録
脛骨の前方移動が大腿膝蓋関節のキネティクスに及ぼす影響
福永 道彦梶原 登雲子伊藤 邦之長嶺 隆二
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2017 年 55Annual 巻 4AM-Abstract 号 p. 320

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抄録

膝蓋骨は大腿四頭筋と膝蓋腱をつなぐものであり,その運動によって大腿四頭筋力のレバーアームが変わることから,膝関節や下肢全体のキネティクスと相互に影響する.しかしながら,膝関節の運動解析は大腿脛骨関節が主であり,大腿膝蓋関節を対象にしたものは多くない.特に,膝屈曲角度が130度を超える深屈曲動作を対象にしたものは極めて少ない.本研究では,膝深屈曲において大腿骨が大きくロールバックすることを考慮し,脛骨の前方移動が大腿膝蓋関節のキネティクスに与える影響を調べた.方法は矢状面二次元モデル解析であり,関節面の接触と力学的平衡を条件として,大腿膝蓋関節の運動と大腿四頭筋力に対する大腿膝蓋関節力と膝蓋腱張力を算出した.脛骨の運動には,人工膝関節を対象として伸展位から屈曲角度150度まで屈曲させたシミュレーションの結果を用い,これを5mmおきに前方移動した.結果として,脛骨の前方移動量を15mm以上とすると最大屈曲時に大腿膝蓋関節が非接触となることを確認した.また,大腿膝蓋関節力は脛骨の前方移動に伴って減少したが,膝蓋腱の張力は非接触となる寸前まで大きく変化しなかった.このことは,脛骨が大きく前方移動しても大腿四頭筋のレバーアーム長は大きく変わらないことを示唆した.今後の課題は,深屈曲位における脛骨の回旋運動の影響を併せて検討することである.

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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