2017 年 55Annual 巻 4AM-Abstract 号 p. 321
高齢者の転倒要因として,歩行機能の低下など,身体機能の低下が挙げられている.一般に高齢者の歩行は,クリアランス,蹴り出し力などが減少,低下している.また,変形性膝関節症などの関節疾患は潜在的患者を含め,有病率は高く,下肢関節の可動域が低下している高齢者は多いと考えられる.そのため,歩行機能を評価するにあたり,膝関節の可動域低下が歩行時の下肢関節群の運動連鎖に与える影響に着目する必要があると考えられる.そこで本研究では,擬似的な膝関節の可動制限が歩行時の足底圧力,下肢関節可動範囲,歩行周期の時間パラメータなど歩行特性に与える影響について調査した.実験は健常者8名に直線8mの歩行路を定常歩行および膝関節の可動制限を施した歩行の2通りの計測を行った.膝関節の可動制限は高齢者擬似体験セットを使用した.足底圧力はF-Scan(ニッタ社製)を使用して,足底圧中心軌跡(COP)と足指部,前足部,踵部の足底圧力を算出した.また,下肢関節の可動範囲は右側方からデジタルビデオカメラを使用して,関節可動範囲を算出した.解析は左右足2歩行周期を解析対象とした.定常歩行と膝制限歩行を比較した結果,膝関節制限時の足指部足底圧力が有意に低下していた.また,踵接地時のつま先のクリアランス,蹴り出し時のMP関節の背屈角度が低下していた.これらのことから,膝関節の可動制限はクリアランス,蹴り出しに関与する可能性が示唆された.