生体医工学
Online ISSN : 1881-4379
Print ISSN : 1347-443X
ISSN-L : 1347-443X
抄録
看護支援技術と医療安全
脇坂 仁
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 55Annual 巻 4PM-Abstract 号 p. 334

詳細
抄録

看護業務用携帯端末の導入にあたり、看護業務の省力化と医療安全の担保という方向性のかなり異なる2つの目的が考慮される。看護業務の効率化を行えば、それだけ各看護師の負担が軽減され、医療安全に注意を向けることができるだろうという消極的な観点から見られることも多い。医療安全担当部署からインシデントレポートから抽出されたリスクを分析することで提案された回避方法は、しばしば医療情報システム上で実現可能なものである。とりわけリスク低減策として提示される手法として情報デバイス上での警告による注意喚起がある。しかしながら様々なインシデントに対応して行くにしたがって、個々ののリスクに対してそれぞれ注意喚起を行うことによる「慣れ」による注意力の低下が懸念される。知識が無いことによるリスク発生は、警告表示による介入は有効であるが、内容を熟知した対象者に対しての警告表示はむしろ注力低下につながる可能性を考えるべきかもしれない。個別事例に対して注意喚起を行う方法ではなく、スタンダード・プリコーションのようにプロトコルを着実に実行することによるリスク低減方法を組み合わせることによって「警告慣れ」への対策とすることも有効だろう。今回情報端末だけでなく、医療情報システム全体として医療安全に積極的に寄与するためにはどのような仕組みが必要なのか、その方法論も含め考察を加える。

著者関連情報
© 2017 社団法人日本生体医工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top