2017 年 55Annual 巻 5AM-Abstract 号 p. 425
排泄物は身体の異常や変化がわかり、通常、侵襲を加えることなく採取できる貴重な情報源である。しかし、羞恥心もあり排泄物を人に見られたり、聞かれたくないと感じている人は多く、そのため正確な観察情報の収集ができないこともある。また近年、高齢患者の増加に伴い、認知機能の低下や障害のある高齢者も多くなり、排泄物の量や性状を正確に説明できない場合がある。さらに、トイレの環境は一般的に室温が低く、衣服の着脱も加わり、バイタルサインズに変化を起こしやすい場所といえる。血圧コントロールが重要であるが、便秘をきたしやすく、排便時に怒責を加えることが急激な血圧の上昇を招き生命の危機にかかわる疾患をもつ人もいる。これらの問題を抱える人々に対して、人権およびプライバシーの保護に配慮しつつ、排泄物の量や性状などの生体情報を客観的かつ正確に把握でき、収集した情報が必要に応じて適切に分析される機能が付与されたトイレの開発や、活動に制限が加えられることなく、皮膚と接触している便座等から情報収集・分析ができ、さらにナースステーション等に設置されたモニターで観察できるシステムがあれば患者の安全・安楽が保持され、看護師の臨床判断や迅速な看護行為の助けとなる可能性が考えられる。看護の立場からは、患者の生命の安全と尊厳が重視され、かつ看護実践の効率化・合理化が図られるシステムの開発に期待する。