生体医工学
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抄録
ラット初代培養心筋細胞の拍動能に及ぼすドコサヘキサエン酸及びアラキドン酸の効果
斉藤 丈小坂 薫佐藤 大介馮 忠剛楠 正隆中村 孝夫
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2017 年 55Annual 巻 5AM-Abstract 号 p. 432

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抄録

In vitroで細胞から再構築した心筋組織の拍動能はin vivoと比較してまだ著しく低い。我々は、多価不飽和脂肪酸(PUFA)が心筋の拍動能亢進に重要であるにもかかわらず、一般的な培地には脂質がほとんど含まれていないことに着目して、ラット胎児心筋細胞の初代培養再生組織の多価不飽和脂肪酸含有量が、同新生児心筋組織のそれに対して著しく低いことを報告した。本研究では、その中でも特に低値であったドコサヘキサエン酸(DHA)もしくはアラキドン酸(AA)の培地内単独添加がラット初代培養心筋細胞の拍動能に及ぼす効果と、細胞内脂肪酸含有量との関連性について検討した。培養3日目から培地へDHA(10~40 μM; n= 5~8)またはAA(20~60 μM; n= 7~8)を2日ごとの培地交換の際に添加し、7日目に拍動能を評価した結果、PUFA添加細胞が無添加細胞に対して高い拍動収縮能を示し、DHAでは20 μM、AAでは50 μM添加時に最大となった(いずれもp< 0.01)。また、培養14日目に組織内脂肪酸含有量を測定したところ、添加脂肪酸の含有量が添加濃度依存的に増加するとともに、DHAでは20 μM、AAでは50 μM添加時のそれぞれの含有量が新生児心筋のそれらに近かった。これらの結果は、in vitro組織の含有量をin vivo心筋のそれに近づけるように培地へのPUFA添加量を設定することが、in vitro組織の拍動能亢進に重要であることを示唆している。

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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