生体医工学
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抄録
生細胞内アクチンフィラメントの微小ゆらぎの計測
岡 知輝片岡 則之
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2017 年 55Annual 巻 5AM-Abstract 号 p. 433

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抄録

アクチンフィラメントは、細胞の形状維持のみならず、多くの細胞で遊走やメカニカルストレスの感知に関与している重要な構造タンパクである。アクチンフィラメントは細胞が静置した状態でも常にターンノーバーを繰り返している上、細胞内、細胞表面上に発現するタンパクは熱ゆらぎの影響を大きく受けている。よって、細胞のメカニカルストレスの感知にアクチンフィラメントのゆらぎが関与している可能性もある。本研究では、株化細胞であるNIH3T3にアクチン結合ペプチドLifeactとGFPの融合ベクターを導入し、生細胞内のアクチンフィラメントの蛍光画像を高速撮影し、その微小ゆらぎの観察を試みた。NIH3T3にベクターを導入して2から3日後、倒立位相差顕微鏡で60倍の油浸レンズ、共焦点レーザースキャンユニットCSU10、CCDカメラを用いて、毎秒10枚の蛍光画像を取得した。取得した画像から明瞭に観察出来るアクチンフィラメントを抽出して詳細に観察した結果、2.3 Hz程度の周波数の微小な振動が観察された。移動距離を算出したところ、約0.3μmであった。経時的な蛍光の輝度変化を解析したところ、周期的に輝度が上昇、低下することが観察され、アクチンフィラメントのゆらぎが3次元的なものであることが推測された。今後、温度や力学条件を変化させて観察することにより、アクチンフィラメントのゆらぎの意義を解明していく。

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© 2017 社団法人日本生体医工学会
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