2017 年 55Annual 巻 5AM-Abstract 号 p. 435
手術器械の体内遺残事例が発生しており,その原因として,手術器械の本数確認と手術の進行が並行するため作業が煩雑になること,手術器械の使用期限が管理できておらず手術中に破損することが挙げられる.課題解決のためには,手術室内における正確な本数確認の実施や使用頻度の管理が求められる.これまでに,Radio-frequency Identification(RFID)タグ付き手術器械,および,手術室内でその情報取得を行うためのシステムを開発した.本報告では,手術室内における本システムの有用性を検証するため,臨床評価試験を実施した.方法として,本研究で開発したシステムを手術器械が載せられるメイヨー台へ配置し,システムによる手術器械の情報取得を行った.同時に,目視による種類および本数を確認し,その結果を比較した.対象術式はソケイヘルニア手術,および乳房切除術とした.結果として,本システムによるRFIDタグ付き手術器械の認識精度は約96%であった.認識困難となった状況として,鑷子などのタグ取り付け部分が磁界の範囲外へ配置されたことなどが挙げられる.一方で,RFIDタグは無線通信を行うため,手術器械へ血液が付着した状態であってもタグを検知できた.いずれの術式においても,本システムによる手術器械の情報取得精度は高く,これまでに認識困難であった手術中の使用状況を把握できることが示唆された.