2017 年 55Annual 巻 5AM-Abstract 号 p. 445
我々は医用超音波機器の安全性検討の一環として,ラットから単離培養した心筋細胞への超音波照射を行い,超音波照射により拍動異常が誘導されることを示してきた.しかし,これまでの検討はガラス上に培養した心筋細胞で行われたものであり,その細胞形態は生体内と大きく異なる.そこで,本研究では生体を模擬した柔軟な足場層上に心筋細胞を培養し,細胞骨格を生体内の状態に近づけ,機械受容感度の変化を調べた.実験には生後2~3日のラット新生仔から単離培養した心筋細胞を用いた.柔軟な足場としては、アクリルアミドゲルを用い、対照条件としてカバーガラス上に培養した試料も作製した.ゲル上とカバーガラス上で拍動する培養心筋細胞の機械刺激受容感度の差を調べるために,音圧と波数が異なる超音波パルスを一回のみ照射し,拍動異常が誘導される閾値を調べた.拍動観察には倒立型光学顕微鏡を用い,拍動異常の判定は目視により行った.細胞の円形度を表すShape indexはゲル上で0.29±0.08,ガラス上で0.11±0.04であり,ゲル上の細胞は細胞骨格が未発達であることが示された.また,拍動異常が生じる波数閾値はゲル上の細胞が約10倍高かった(音圧13.5 MPa).これらの結果は,心筋細胞の機械刺激受容感度が細胞骨格の発達程度に依存して変化することを示唆するものと考えられた.