2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S306
我々は定常状態視覚誘発電位(Steady-State Visual Evoked Potential ;SSVEP)のパワーとヒトの網膜の解像度には関係があることをこれまでに示している.そこで本研究では,網膜を切除して網膜の解像度を調べることができる金魚に着目し,金魚の網膜の解像度とSSVEPの性質を明確にすることを目指す.本稿ではその準備段階として金魚の視蓋に対して神経電位の計測を行い,SSVEPを発生させる視覚刺激を提示した際の細胞の反応を確認する.実験は以下のように行う.金魚を水槽に固定し,金魚の頭蓋骨にGNDを設置する.神経電位は,ガラス電極を用いて細胞外記録で計測する.金魚に60秒間,点滅する白色LEDを提示する.点滅周波数は1Hzとする.計測した神経電位から,点灯・消灯後約200~500[m sec]は持続的な発火が見られた.また,刺激光の点灯直後約100[m sec]は発火が見られず,消灯直後約100[m sec]は発火数の増加が見られた.実験結果より,刺激光がついた瞬間にも消えた瞬間にも強く反応するon-off反応の細胞が計測されたと考える.従来の研究でon反応の細胞とoff反応の細胞が確認されたことから,視蓋の神経細胞は視細胞の反応をそのまま取得して反応している可能性が考えられた.今回on-off反応の細胞が計測されたことより,金魚にも網膜上のある範囲に存在する複数の視細胞の反応の影響を受けて一つの反応をする,受容野を持つ神経細胞が視細胞と視蓋の間に存在することを確認した.