生体医工学
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灌流培養床を用いた3次元組織の構築
坂口 勝久清水 達也梅津 光生
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2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S37

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抄録

単離細胞から3次元組織への構築は再生医療や薬剤スクリーニングの極めて有用なツールとして注目を浴びている。本研究は温度に応答して細胞脱着可能な培養皿を用いて細胞塊をシート状に形成し、その細胞シートを積層化することによって3次元的な生体組織の構築を試みている。しかしながら、単に細胞シートを重ねるだけでは高密度の細胞塊であるために酸素・栄養素の供給や老廃物の除去が困難である。そこで、血管付き細胞シートを灌流可能な微小流路付きゲル上で培養し、細胞シート内血管と微小流路を結合させることで、培養液灌流可能な血管網付き心筋組織の作製ができないかを検討した。本実験ではヒト線維芽細胞、ヒト血管内皮細胞を共培養した細胞シートを使用し、血管ネットワークを有する細胞シートを積層化した。コラーゲンゲルの微小流路に培養液を7日間灌流して培養した結果、細胞シートおよびコラーゲンゲル内の血管内皮細胞が浸潤・管腔化してネットワークが統合し、灌流できる血管網に発達した。さらに、心筋細胞シートを追加積層行うことで厚さ0.5mmの立体心筋組織の構築を可能にした。この結果から、灌流可能な血管網を導入することで細胞からの立体組織を創出できることを示すことができた。

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© 2018 社団法人日本生体医工学会
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