2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S371
ハイヒールを着用した歩行では足関節が常に底屈位となり, つま先立ち状態に強制される. そのため, 歩行時において足関節を底屈させる内側腓腹筋への影響が懸念される. そこで本研究では, 足関節が底屈位に強制されるという点でハイヒール歩行に類似性が高いつま先歩行における内側腓腹筋の力学特性を明らかにすることを目的とした.本研究では, 歩行中の腓腹筋の誘発筋音図をシステム同定し, 力学特性の1つであるスティフネスを求めた. 対象者は健常成人男性5名とし, つま先接地期と立脚後期に2回に1回電気刺激を入力し, 歩行時の随意収縮による筋音図(vmmg)と誘発収縮を含む筋音図(emmg)を交互に計測した. vmmgとemmgそれぞれを同期加算平均し, それらの差を求めて誘発筋音図を抽出した. 入力を電気刺激, 出力を誘発筋音図として特異値分解法を用いたシステム同定によって伝達関数を算出し, 伝達関数からスティフネスを求めた. つま先接地期, 立脚後期ともにスティフネスはつま先歩行時の方が大きかった. スティフネスの増加要因は筋形状と筋活動の変化が考えられる. つま先歩行では足関節が常に底屈位に強制されるため, 通常歩行時に比べ, 筋長が短く, 径が大きくなっている. また, つま先歩行ではつま先のみで衝撃を受け止めるため, つま先接地期において筋活動が急激に増加したと考えられる. よって, 筋形状と筋活動の変化など複合的な要因がスティフネスを増加させたと考えられる.