2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S39
再生医療における心疾患へのアプローチ法としてin vitro心筋再生組織が注目されているにもかかわらず、再生組織の発生応力はin vivo心筋に比べて著しく小さいことが指摘されている。生体内で合成できない多価不飽和脂肪酸(PUFA)は生理活性を有し、心筋を含む多様な組織の機能調節に極めて重要であるが、細胞培養に用いられる培地は水溶性であって、脂質はほとんど含まれていない。これまでに我々は、ラット胎児由来培養心筋細胞のPUFA含有量が、新生児心筋組織のそれと比較して著しく低いこと、および培地へのPUFA単独添加が、心筋細胞の拍動収縮能を向上させることを明らかにした。本研究では、先行研究で拍動収縮率が向上したドコサヘキサエン酸(DHA)及びアラキドン酸(AA)を同時添加したときの、それぞれの添加濃度と拍動収縮能の関連性について検討した。その結果、DHA 10 μM + AA 10 μMまたは20 μMを培地に添加すると、4日後の拍動収縮率が無添加培養細胞に対してそれぞれ有意に高値(P<0.05)となった一方で、拍動数には影響を及ぼさなかった。またこれらのパラメータの積としての単位時間あたりの積算収縮率は、DHA 10 μM + AA 20 μM添加時に、無添加培養細胞に対して有意に高値(P<0.05)であった。これらの結果は、これらPUFAの添加が培養心筋細胞の拍動収縮能の改善に重要である可能性を示唆している。