生体医工学
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リラックス動画視聴時の心拍数変動指数を用いたうつスクリーニングのためのアルゴリズム開発
林原 史明橋爪 絢子榛葉 俊一松井 武巳
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2018 年 Annual56 巻 Abstract 号 p. S76

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抄録

2015年のうつ病罹患者数は全世界人口の4%以上にのぼるが,その半数以下しか有効な治療を受けていないとされる.うつ病の診断は,世界保健機構や米国精神医学会の診断基準(ICD,DSM)に基づいて問診により行われることが多いが,診断結果は医師の経験や患者の自覚症状に依存する.より正確な診断のためには,うつ病の客観的な診断法の確立が必要とされている.本研究グループでは,精神的負荷課題を課した際の心拍数変動指標(HRV: Heart Rate Variability)や心拍数の変化パターンが,健常者とうつ病患者で異なることを利用して,うつ傾向の有無を客観的に判定するための研究を行っている.本研究では,精神的負荷課題の代わりに,対象者に負担の少ないリラックスを促す動画を視聴してもらい,その際の反応を用いたうつ傾向の判別アルゴリズムを開発し,判別精度を検証した.精神科に通院しているうつ病患者3名(42±8歳)と健常者18名(47±20歳)を対象に,1分間の動画視聴の前後に1分間の安静を設け,その間の脈波を計測した.脈波から算出したHRVと心拍数を用いて線形判別分析を行った結果,100%の感度と特異度で,うつ病患者と健常者の判別ができることが示された.本アルゴリズムを使用することで,リラックスを促す動画視聴時およびその前後に3分間のHRV計測を行うだけで,客観的なうつ病のスクリーニングが高精度で行えるシステムの構築が可能となる.

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© 2018 社団法人日本生体医工学会
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