2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S211_1
幼児教育・保育は「環境を通して行う」ことが基本である。教育者・保育者に課された重要な役割の一つは、“ヒト” “モノ” “コト”のそれぞれの環境を整え、環境の力(=アフォーダンス)を十分に引き出すことである。園で生活する子どもたちは、自由な遊びの中で環境の力を感じ利用しながら幼児期に育みたい資質・能力を体験的に獲得していく。このように子どもの発達と環境の関係について科学的に考察しようとするのが保育心理学とよばれる研究領域である。この領域におけるもっとも大きな命題の1つ--子どもの資質・能力を育むための環境はどうあるべきか?--について話題を提供したい。ヒト・モノ・コトに加えて自然環境にも恵まれる沖縄では環境構成の自由度が比較的高い。沖縄における幼児教育の環境構成の工夫とその効果について、いくつかの事例を報告する。沖縄でも新たな視点やアイデアを活用した幼児教育実践はこれまでも意欲的に行われているが、十分なエビデンスに基づいた議論や知見が蓄積されてきたとは言い難い。そこで今回は、このような発展途上にある保育心理学と環境という研究テーマに対する育児工学的アプローチの可能性を探りたい。