2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S274_2
近年、曲面を用いる細胞培養技術を通じ、培養面からの脱離挙動や分化といった平面上では見られない特異な細胞挙動が報告され、細胞が持つ形状認識の仕組みに注目が集まっている。しかし従来の曲面培養技術は、培養面の曲率が一定である、細胞の観察が困難であるといった技術的制約を抱えていた。本研究はこれらの制約を排し、培養面の曲率変化に対する細胞の動的応答を観察可能な新しい細胞培養プラットフォームを開発する。本研究が提案する新規細胞培養デバイスは、シリコンゴム製の細胞培養チャンバー、光硬化性樹脂SU-8製のマイクロスリット、減圧チャンバーからなり、細胞培養面の曲率を空気圧で制御する。曲率の大きさや向きは、空気圧やスリットの向きを変えることで細胞培養中の任意のタイミングで変化させることが可能である。このようなデバイスを製作し、細胞が接着・伸展している平面状の培養面に0.25mm[-1]の曲率を付与したところ、細胞が曲率変化に応じて向きを変える様子が観察された。本手法は、培養中に曲面の形状を柔軟に変化させることができる新しい培養技術であり、今後、細胞の形状認識機構の解明に貢献するものと考えられる。