2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S46_2
目的:経頭蓋直流電気刺激を皮質に与えると、脳の働きが増強されることが報告されている。本研究の目的は、皮質へ経頭蓋直流電気刺激を与えることで網膜への電気刺激が引き起こす神経応答を増強できるかどうかを調べることである。方法:麻酔下の健常ラット(n = 9)、網膜変性モデルラット(n = 10)の右側視覚皮質を露出させ、直径2 mmの電極を露出領域近接の頭蓋骨上に配置し、陽極直流(0.1 mA、10分)を印加した。皮質への直流電気刺激前後の電気誘発電位を記録した。電気誘発電位は、ラットの左眼に電気刺激を加え、網膜電気刺激によって応答する誘発電位を視覚野より記録した。網膜を電気刺激すると、全てのラットに見られた、刺激後15 ms付近のネガティブ側(N1)、20~60 msのポジティブ側(P2)の応答ピークの差を本研究では電気誘発電位と定義した。結果:全てのラットにおいて、電気誘発電位は皮質への直流電気刺激前後で有意な変化は認められなかった。 考察:有意な変化が認められなかった要因の一つとして、皮質への直流電気刺激の有無に関わらず、誘発電位を記録するために視覚野へ挿入した記録用電極により、脳の状態が数時間安定しないことが影響したと考えられる。