2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S62_1
マルチプレックスCARS(multiplex coherent anti-Stokes Raman scattering)分光顕微鏡は,分子種に固有の分子振動情報を用いることで,無標識で様々な分子を分別・可視化することを可能とする.蛍光顕微鏡とは異なり,分子量の小さな生体分子や薬物分子等の振る舞いをありのままの状態で観察することができる.しかし,光ダメージ低減と計測時間短縮を両立することが技術的な課題であった.そこで我々は,楕円スポットでマルチプレックスCARSを並列励起/観測することで,最大放射照度(単位面積あたりのレーザーパワー)制限下でのCARS光強度の増強手法を見出し,光ダメージ低減と計測時間短縮の両立が実現することを数値計算により示した.さらに,提案手法を実現する為の装置を開発し,指紋領域全体にわたるCARSスペクトルイメージ(100×100×512 pixels)を0.72 秒で計測し,生細胞観測に応用できることを示した.本研究の成果は,薬物の浸透具合や生化学反応のモニタリング,生検試料の迅速診断を可能とする.