生体医工学
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サイバニクス革命:人・ロボット・情報系の融合~ 装着型サイボーグ、革新的サイバニックシステム、医療イノベーションを中心に ~
山海 嘉之
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2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 101-102

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抄録

「サイバニクス(Cybernics)」は、脳/ 神経科学、行動科学、ロボット工学、IT、人工知能、システム統合、生物学、心理学、哲学、倫理、法律、ビジネスなどの異なる領域を結びつける新分野であり、その展開が活発化している。「人」と「サイバー・フィジカル空間」を融合する「サイバニクス」は、ロボット産業、IT 産業に続く「サイバニクス産業」というイノベーション推進の中核を担うものであり、人・テクノロジー・医学を対象とする「生体医工学」の分野を更に発展させ大きく貢献できるものである。現在、サイバニクス・コンソーシアムでは、医療・福祉・生活(職場環境を含む)分野で、さまざまな革新的技術の創出、社会実装の推進、未来開拓への挑戦が進められている。

サイバニクス領域の代表的な研究開発事例であるHAL は、脳神経系由来の生体電位信号によって人とHALをつなぎ、人とロボットを機能的に融合する世界初の「装着型サイボーグ」ということができる。生体医工学分野から見ても非常に興味深いものである。HAL を装着すると、脳と身体とHAL との間でのインタラクティブなバイオフィードバック(iBF:interactive Bio-Feedback)ループが構築され、神経と神経、神経と筋肉の間のシナプス結合が強化・調整される。新たな医療技術として医療機器承認された医療用HAL による機能改善・機能再生治療は、サイバニクス治療、HAL-Therapy、HAL- Treatment と呼ばれ、日・米・欧、アジア、中東などの国々で共通の医療機器プラットフォームとして展開が活発化している。ドイツでは公的労災保険が適用され、日本では従来は治療法がないとされた難治性神経筋難病疾患(SMA、ALS、筋ジストロフィーなど8 疾患)に対して治療効果が示され、公的な医療保険が適用されている。

本講演では、「生体医工学のグローバル展開に向けて」という当該学術集会の大きなテーマに沿って、革新的サイバニックシステムによる医療イノベーションとその世界展開、また、非医療分野でのフレイル対策の観点から身体機能低下者への自立支援・生活支援、労働現場での作業支援、再生医療とHAL による新医療技術開拓への取り組み、予防・早期発見・健康管理のための動脈硬化や心機能などのバイタルセンシング、生活全般の観点から最先端AI ロボットによる作業代行など、医療・福祉・生活分野(職場環境を含む)における様々な革新的サイバニクス技術の展開について最新情報を交えながら講究する。

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© 2020 社団法人日本生体医工学会
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