2020 年 Annual58 巻 Abstract 号 p. 103-104
外科手術が低侵襲性を求められる時代となり、神経内視鏡による外科治療は患者への負担を軽減できる治療手技としてますます普及することが予想される。また、最近、神経内視鏡と顕微鏡手術の間に存在する、神経外視鏡によるdisplay surgery(heads-up surgery)が大いに注目を集める状況になっている。岡山大学脳神経外科では神経内視鏡・外視鏡による脳神経外科手術にいち早く取り組んできた。私たちの行っているこれらの手術ならびに手術室におけるそのセッティングについて、本講演ではビデオを中心に提示し、解説する。
1.閉塞性水頭症に対する第3 脳室開窓術(ETV):従来の脳室腹腔シャント術に代わって第一選択になることが多い。軟性鏡の先端にCCD カメラが搭載され、画質が格段に向上し、安全性が高まった。
2.脳室内腫瘍摘出:内視鏡下の生検で確実に組織診断ができる。症例によっては透明のシリンダーチューブを挿入しそのまま腫瘍摘出も可能である。
3.下垂体腺腫およびトルコ鞍近傍腫瘍に対する内視鏡的経蝶形骨洞手術
神経内視鏡単独で行っている。磁場式ナビゲーションの併用、high vision から4K への高画質化を進め、より精細な画像で手術を行っている。
4.顕微鏡と神経内視鏡を併用するhybrid 手術
神経内視鏡は視野角が0 度だけではなく、30 度、70 度など顕微鏡では見えない部分を見るための視野角が設定されている。顕微鏡と神経内視鏡を併用する手術をhybrid 手術とよんでいるが、その代表的症例のビデオを提示する。
5.3D の外視鏡導入- heads-up surgeryの幕開け
外視鏡が3D で、かつhigh vision あるいは4K の高画質となり、3D 眼鏡をかけてdisplay を見ながら行うheads-up surgery が注目を集めている。術者、助手、手術を学ぶ研修医や学生、を含め、手術室内にいる全員が術者と画面を共有しているため、術者との一体感が強く、教育機関における手術指導の効果は大きい。外視鏡は顕微鏡に比べて鏡筒がないためはるかに小さく、また術者は頭をあげて正面のdisplay を見ながら手術を行うので、疲れも少ない。岡山大学では2018 年より3D 外視鏡を用いた手術を導入し、従来、顕微鏡で行っていた手術を3D 外視鏡で行う手術に少しずつスイッチしている。
以上、私たちが行っている神経内視鏡・外視鏡手術の実際を動画を中心に紹介したい。